呼吸器疾患
呼吸器疾患

Respiratory disease

「風邪が治ったけれど咳が止まらない」
「夜寝ていても咳き込んで起きてしまう」
そんな経験はありませんか?咳くらい自然に治るだろう。そんな軽い気持ちで放っておいてしまいがちですが、長引く咳には様々な病気が隠れている場合もあります。

咳はなぜ出る?

私たちは生きていくうえで口や鼻から1日に2万回~3万回もの呼吸をし、およそ1万5千リットルもの空気を吸い込んでいます。当然この中には酸素や窒素以外にもほこり、細菌、ウイルスといった異物も含まれています。この異物が空気の通り道にあたる気道に侵入してきた際に、肺と気道を保護するために取り除こうとおこる生体防御反応が咳なのです。一方でアレルギー反応や体の中に異変があることを知らせるサインになることもあります。

気管支喘息

 咳が出る病気としてはもっともポピュラーな呼吸器疾患のひとつです。
 気管支が繰り返し炎症を起こすことで粘膜が厚くなり、また痰などが増加して気道がせまくなることで、息を吸えるのに吐きづらい、吐くときにヒューヒュー、ゼーゼーという喘鳴や呼吸困難を生じます。原因はアレルギーの関与するアトピー型とそうでもない非アトピー型に大きく分けられます。アレルギー以外でも、ストレスや台風などの気圧の変化が悪化の原因になることもあります。
 診断には、症状の他に血液検査(アレルギーの素因を調べる)、呼吸機能検査、痰の検査等が必要となることがあります。喘息は付き合っていく慢性の病気であり、治療の目標は喘息発作を予防し、症状なく日常生活を送ることです。そのために、症状に応じて発作を予防する吸入薬、内服薬を使用します。一定期間症状が落ち着いていれば薬の量や種類を減らすことも可能です。発作の際には気管支を広げる薬、炎症をとる薬を点滴、吸入で使用します。きちんと診断、治療されれば気管支の炎症がとれ、正常な気管支に戻るのが喘息の特徴(可逆性)ですが、未治療のままだったり治療が不十分だと厚くなった気管支壁が元に戻らなくなり(リモデリング)難治化します。疑わしい場合は早めにご相談ください。

咳喘息

 気管支喘息のひとつの病型として喘息特有の喘鳴や呼吸困難が起こらず、咳だけが唯一の症状です。風邪などの感染症、喫煙、ストレスなど、なにかしら
のアレルギーが原因で発症します。治療にはステロイド吸入薬や気管支拡張薬を用います。治療をおこなわずに放置すると、気管支喘息の発症へとつながっ
てしまうことがあり、この場合治療期間も長引いてしまいます。単なる咳として放置するのではなく、早期に医療機関の受診をすることが大切です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

別名「たばこ病」と呼ばれ、原因の90%以上が喫煙によるものです。気管支や末端の肺胞に炎症がおこり、肺胞が破壊されることによって肺機能が低下し、呼吸がしにくくなる病気です。喫煙歴の長い方で、安静にしていれば症状がないものの、坂道や階段を昇る際に息苦しさを感じるのが特徴です。また、症状が悪化すると気管支喘息のように息を吐くときにゼーゼーする喘鳴を伴うこともあります。ありふれた症状であるため見逃されがちですが、進行すると呼吸不全や心不全を合併する病気ですので早期発見、早期治療が重要です。治療としては喫煙習慣のある方はまず禁煙療法です。また、呼吸器リハビリテーションや運動療法、薬物療法がおこなわれます。

肺炎

 肺炎の原因にもいろいろありますが、一般的には肺が細菌やウイルスに感染し、炎症を起こす感染症としての肺炎が頻度が高いです。肺炎球菌、マイコプラズマ肺炎、インフルエンザなどが原因となります。
 主な症状は咳、発熱、痰などと風邪の症状に似ています。上気道(鼻やのど)が感染して炎症を起こす風邪に対して、肺炎は下気道(主に肺の中)の感染症であり、肺胞に炎症が起こるため、肺炎の方が症状は重いことが多いです。高熱、膿のような痰が多い、息苦しい等の症状があれば肺炎を疑いましょう。
 肺炎は日本人の死因第3位であり、高齢な方やCOPDの方は重症化しやすいため注意が必要です。予防には肺炎球菌ワクチン接種も有用です。ワクチン接種をしておくことが予防につながります。

肺がん

 気管、気管支、肺胞の細胞がなんらかの原因でがん化したものです。まわりの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れにのって転移していきます。早期ではほぼ無症状で、進行するにつれて咳、倦怠感、呼吸困難、体重減少、痰、血痰、胸の痛みなどの症状があらわれます。特徴的な症状がなく風邪や他の呼吸器疾患の症状と似ていますが、血痰は肺がんの可能性が高く、この場合速やかな受診をおすすめします。肺がんの発生には喫煙が最大のリスクファクターであることは知られていますが、最近では比較的若い女性、非喫煙者の肺がんも増加傾向にあります。診断には胸部X線やCT検査が重要です。また、肺がんは近年新たな抗がん剤の開発が進んでいる領域のひとつです。

心不全

 心不全で咳?と思われるかもしれませんが、横になると咳が出ることも心不全の症状のひとつです。 
その他、 ①階段や坂道、重い荷物を持った際の息切れ ②むくみ ③体重増加 ④動悸 などの症状がみられます。症状がある場合は早めの受診をおすすめします。心不全の原因は心筋梗塞や不整脈、高血圧、狭心症、弁膜症など様々であり、詳しい検査とその原因に応じた治療が必要となります。