

感染性肺炎 Pneumonia
肺には、基本的に細菌やウイルスは存在していません。しかし、その肺の中に細菌やウイルスなどなんらかの病原微生物が侵入し炎症が起きることを肺炎といいます。風邪とよく似た症状ですが、感染する場所が異なります。主に鼻やのどといった上気道に原因微生物が感染して炎症を起こす風邪に対して、一般的な肺炎は肺の奥にある肺胞という部位に原因微生物が感染して炎症が起こります。
肺炎にはウイルスや細菌などの病原微生物を吸い込んで起こる一般的な肺炎(感染性肺炎)と薬剤やアレルギーなど感染症以外の原因で起こる肺炎(非感染性肺炎)があります。
肺炎は日本人の死因第5位で、年間約7万4千人の方が亡くなります(2022年データ)。肺炎はまだ免疫機能が十分に発達していない小児がかかることもありますが、亡くなる方のほとんどが65歳以上の方であるため、特に気をつけなければならないのは高齢者です。適切な治療を行えば、怖い病気ではありません。しかし、様子を見ていて治療のタイミングが遅れてしまったり、基礎疾患など重症化しやすい要因を抱えていると、最悪の場合死に至ることもあります。
元気に過ごしている高齢者も安心できません。特に、75歳以上では、肺炎をきっかけに体力が低下し、介護が必要になることもあります。


感染性肺炎の種類と症状

最も多い原因が細菌性肺炎で、次いでマイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎などの非定型肺炎です。マイコプラズマなどは、細菌性肺炎の治療で使われるβラクタム系と呼ばれる抗生物質がターゲットとする細胞壁をもたないため、特別な抗生物質で治療する必要があります。また症状なども細菌性肺炎と異なる特徴があるため、「非定型肺炎」と呼ばれます。

咳や痰(細菌性肺炎では黄色や緑色のしつこい痰)、発熱、息苦しさ、食欲の低下、水分が取れないことによる脱水症状などです。重症化すると呼吸困難をきたして人工呼吸器が必要になることもあります。世界を震撼させた新型コロナウイルスも重症化すると肺炎を起こし、たくさんの方が亡くなりました。
感染経路
発症している人の咳に含まれる病原微生物が、口や鼻から入り込んで感染する「飛沫感染」と、ドアノブなどに付着した病原微生物が自分の手の指を経由して口や鼻から体の中に入り込んで感染する「接触感染」があります。一般的には、肺炎や風邪などの感染は、飛沫感染であることが多いです。
診断
聴診では、特徴的な雑音が聴こえることがあります。血液検査で炎症反応の上昇があるか、脱水や肝腎機能、電解質に異常がないかを確認します。その後、必要に応じて胸部エックス線検査やCT検査で画像診断を行います。炎症が起きていれば、その部分が白く映し出されます。

治療法
細菌やウイルスを退治するための抗生物質や抗ウイルス剤を使った原因療法を行います。多くの場合、抗生物質を投与すれば数日で症状が改善していきます。また、特効薬がないウイルス性肺炎の場合は、酸素投与、解熱剤、咳どめなどの対症療法を行います。健康な若い人や軽症であれば通院で治療が可能な場合もあります。しかし、重症の場合や小さな子ども、高齢者などでは、入院して治療が行われることが多いです。
肺炎にかからないために
大切なのは、肺炎の原因となる細菌やウイルスが、からだに入り込まないようにすること、そしてからだに侵入してきても退治できる免疫力をつけることです。
1.感染予防をする

肺炎予防の第一歩は、感染予防です。そのためにまず手洗い・うがい、人が多い場所に訪れる際はマスクの着用をしましょう。また、歯磨きなどをおろそかにせず、口腔内を清潔にしておくことも大切です。
2.予防接種をうける

日常でかかる肺炎の原因菌で最も多いのは肺炎球菌という細菌
です。これはワクチンの接種により、感染予防や感染した場合
の重症化を防ぐことができます。
また、インフルエンザや新型コロナウイルスをきっかけに肺炎に
かかることも多いことから、インフルエンザや新型コロナウイルス
ワクチンの予防接種も大切です。
3.免疫力を高める

からだに侵入してきた細菌やウイルスを退治するために、免疫力を高めることも重要です。食事や睡眠など規則正しい生活を意識しましょう。また、持病をきっかけに体調が悪くなり免疫力が低下することもあるので、治療をしっかり行ないましょう。たばこは免疫力を低下させ、気管や肺にも悪い影響を及ぼします。禁煙することを考えましょう。
Link Vol.25 監修:石橋総合病院 内科医 林ゆめ子